Greeting理事長挨拶

2023年5月30日に開催されたPVTEC通常総会に続く第129回理事会にて理事長を重任することになりました。2017年5月に理事長を拝命してから7年目に入りますが、就任当初は再生可能エネルギーを基幹エネルギーと位置付けた政策の下でPVTECはNEDOの「太陽光発電システム効率向上・維持管理技術開発プロジェクト」「太陽光発電リサイクル技術開発プロジェクト」事業の一部を受託した活動を行っていました。
一方就任後の6年間で世界が大きく変わり、PVを取り巻く環境も激変しました。
全世界でカーボンニュートラルの大きなうねりが瞬く間に生まれ、いまや各国の最重要施策になりました。2023年5月のG7広島サミットではエネルギーの安全保障や気候変動策として2030年までにG7として太陽光発電の累積導入量を1TW以上にすると明記されるまでになりました。
日本では、PVを主力電源と位置付けて2030年に太陽光発電の累積導入量を104~118GWAC(2022年末で84.9GWAC)にするとの大きな目標を掲げていますが、一方で太陽光発電所に対する環境破壊(自然生態系への影響・景観の問題・災害の誘発・不法投棄等)への不信感が住民の間で広がっています。太陽光発電所設置の適地が少なくなる中で、上述した課題について地域との共生を諮り、2030年の導入達成に向けて業界が一丸となって推進していかなければなりません。今後の設置場所としては農地、駐車場、ため池等の水上や移動体屋根面、ビルの壁面、道路等多様な設置形態が考えられています。
多様な設置形態に耐えられるような新しい太陽電池の開発も加速しており軽量なペロブスカイト太陽電池や、これとシリコンとのハイブリッドといった革新的なセル構造の太陽電池も実用化されようとしています。
PVTECは、太陽光発電の主力電源化に向けた技術開発と新しいテーマの検討を行っております。PVが主力電源の一翼を担うために必要な技術開発テーマを着実に実行し、これにより太陽光発電の普及拡大に貢献し、地球環境の保全とカーボンニュートラルを目指します。
[PVTECの事業]
現在の主力事業は、2020年度に始まったNEDOの「太陽光発電主力電源化推進技術開発」における特別事業4件ならびに今年3年目を迎える経済産業省委託のBIPVに関する国際標準化事業です。NEDO事業4件は、新市場開拓に関する3件(壁面設置PVと移動体PV、PV搭載商用車)と、太陽光発電の長期安定電源化に関する1件です。
「壁面設置太陽光発電システム市場拡大のための共通基盤技術の開発とガイドライン策定」は、建物壁面にPVパネルを設置するメリットを定量化、可視化し、ユーザの理解と社会受容性を高めることを目指しています。環境性能評価技術や発電量評価技術の開発などに取り組み、ガイドライン化によってユーザの理解を促進し、設置拡大に貢献します。
「移動体用太陽電池の動向調査」は、動向調査の枠組で、移動体PVの普及に向けたコミュニティ拡大、レジリエンスなどのメリット評価、信頼性評価技術開発などに取り組んでいます。
2023年に新規受託した「PV搭載商用車の実証と効果推定技術開発」は、車載太陽電池の発電量を推定し燃料消費低減効果を推定する目的で実証試験を行い検証する事業になりますが、PVTECは委員会を組織し助言を行う等の側面支援を行います。
最後の長期安定電源化「高安全PVモジュール、高安全PVシステムの技術基準案の策定」では、太陽電池モジュールの火災安全に必要とされる設計基準案策定と評価手法開発とともに、高安全PVシステムに必要とされる点検、診断技術の技術基準案の策定などに取り組んでいます。
経済産業省委託の「建築一体型太陽光発電に関する国際標準化」は、受託期間の最終年度になりますが6つのテーマを設定して国際標準化に向けて取り組んでいます。
[PVTECの強み]
PVTECの強みは「異分野融合」であると認識していますが、この強みを活かし、さまざまな業界との融合を図ってきました。
建築業界との融合としてBIPVに関する各種団体の協議の場所は今やPVTECの顔となりましたが、それに加えて、移動体分野(運輸分野)との融合による移動体PVの推進、IT業界との融合によるデジタルPVの推進などを進めてきました。
2023年5月30日に開催しました技術交流会でも、水素分野では川崎重工様から、そしてデータサイエンスをPVと融合させたヒラソル・エナジー様からご講演をいただきましたので、さらにこれらの分野とも異分野融合を進めて参る所存です。
[PVTECの将来]
今まさに戦略企画部会の中で、PVTECの将来像を議論いただいているところですが、PVの高効率化、低コスト化、長寿命化に加えて、利活用面の追求として機能一体型PV(屋根材・壁材・車両・道路・駐車スペースとの一体型PV)やPVT(太陽光+太陽熱ハイブリッドモジュール)等の複合モジュール化、軽量・フレキシブル・カラフルなモジュール化等の様々な課題があります。また社会受容性の確保も重要な課題です。
PVTECでは現行の受託事業の着実な遂行を行うとともに、これらの課題に組合員の皆様の力をお借りして真摯に取り組みカーボンニュートラル実現のために取り組んでまいります。引き続きご支援を賜りますようお願いいたします。
2023年7月
太陽光発電技術研究組合(PVTEC) 理事長 永野広作
Overview組合概要
組合名(英文名) | 太陽光発電技術研究組合(略称:PVTEC) Photovoltaic Power Generation Technology Research Association |
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所在地 | 〒105-0001 東京都港区虎ノ門1-13-3 虎ノ門東洋共同ビル |
設立日 | 平成2年11月14日(設立総会) 平成2年12月20日(設立認可) |
設立の目的 | 組合員各社の研究開発能力を結集し、さらに大学等、産官学の協力のもとで、太陽光発電に関する研究開発を共同で実施し、日本の太陽光発電産業の発展に貢献する。 |
研究開発方針 | 本研究組合を通して、国際競争力のある強力な研究開発体制を構築し、研究開発を行う。太陽光発電システムの高性能・高信頼性化技術や健全性維持、新規市場開拓、標準化等の推進に関する共通課題を効率的かつ迅速に解決することにより、日本の太陽光発電関連産業の発展に貢献する。第6次エネルギー基本計画に沿って再エネの主力電源化を推進し、2030年のエネルギーミックスを前倒しできるよう事業化を進める。 |
役職員 | 理事長 専務理事 常務理事 |
組合員名(五十音順) | 現組合員(2023年7月1日現在、18社・機関)
設立時組合員(23社・機関)
(*印中途脱退組合員) |
研究開発の内容 | 太陽光発電産業の健全な市場発展に寄与するために、①建築一体型太陽光発電に関する国際標準化、②壁面設置太陽光発電システム市場拡大のための共通基盤技術の開発とガイドライン策定、③高安全PVモジュール、高安全PVシステムの技術基準案の策定 、④移動体用太陽電池の動向調査、⑤PV搭載商用車の実証と効果推定技術開発を委託事業として進める。また自主事業として・技術ビジョン研究会/PVへのAI・機械学習応用研究会/PVと金融研究会/タンデムPV研究会/再エネ電力のデジタル取引研究会の5つの研究会にて研究を進める。 |
特別事業 |
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自主事業 |
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研究体制 | 理事会、運営委員会のもとで「戦略企画部会」と「技術交流部会」を中心に企画立案、情報交流を行い、委託研究・共同研究を順次スタートさせている。
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